【ホンダ】保育園で電力供給が停止、燃料電池自動車(FCV)の外部給電機能が活躍
2016年6月17日、埼玉県さいたま市の保育園を併設する複合公共施設にて電力供給が停止する事態が発生。この非常事態に対して、さいたま市は市が所有するFCV(燃料電池自動車)“FCXクラリティ”を保育園に出動させ、外部給電機能により扇風機10台と冷蔵庫に電力を供給。電力復旧するまで安定的に電力供給を続け、外部給電機能の有効性が証明される結果となった。
6月17日、保育園を併設する複合公共施設の電源設備が故障し、この施設全体で電力供給が停止する事態が発生。すぐに修理業者を手配したものの、即座に復旧できる見込みはなかった。この時期停電が起こり最も問題なのは空調がストップすること。6月とはいえ室外気温は30℃にもなっており、園児たちの体調を考えるとその暑さをしのぐことが重要。
午前11時30分頃、こうした非常事態の連絡を保育園から受けたさいたま市は、保育園が預かる100人近い子どもたちの体調維持のために、扇風機を複数台持ち込み、園所有のものとあわせた全10台の扇風機を午後7時の閉園まで稼働することを考えた。
そして、その大量の扇風機を同時に、長時間にわたって稼働するための電源が“FCXクラリティ”だった。この“FCXクラリティ”は、現在Hondaが市販する“クラリティ FUEL CELL”の先代モデルのFCVで、2014年3月にHondaがさいたま市に納車したもの。平時は公用車として、非常時には外部給電器を介して避難所などに電力を供給することを想定して導入された。その非常時での出動機会がこの日訪れたのだった。
非常事態の知らせから35分後の午後0時5分、“FCXクラリティ”が保育園に到着。さいたま市の職員、保育園の先生が一緒になって園内に10台の扇風機を設置し、スイッチを入れると扇風機の羽根が回り出した。こうして暑さが和らいだことで、園児たちも気持ちよくお昼寝をはじめた。さらに冷蔵庫への電力供給もスタート。また、“FCXクラリティ”は燃料が3分の1程度での出動だったため、閉園までの電力供給を見据え、市役所の電気自動車(EV)がもう一台出動。FCVとEVの2台体制で保育園に電力を供給した。
そして午後5時頃には電力の復旧工事が完了。これに伴い“FCXクラリティ”からの給電も終了した。
今回、実証実験下ではなく、実際に電気が使えないという本当の非常時に、施設の電力が復旧するまで大量の電力を何のトラブルもなく、安定的に供給することができた。この結果は、非常時に備えてFCVを導入すること、およびFCVの外部給電機能の有効性を証明していると言える。
(発表日:2016/07/05)